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【穏田神社×金沢美術工芸大学】良縁守「くくる」:制作した工房見学

金沢美術工芸大学と共同で石川県の伝統工芸技術を用いた良縁守「くくる」を奉製しました。

令和7年1月1日(水)より穏田神社にて頒布いたします。
九谷焼と真田紐を組み合わせたこちらのお守りは、売上の一部を能登半島地震の復興義援金として寄付します。

今月12月は、当社のHPやSNSにて良縁守「くくる」制作の裏側を公開し、このプロジェクトに携わってくださった方たちの思いを届けていきます!

▼良縁守「くくる」の詳細はこちらの記事をご覧ください。

▼制作した学生2名と指導された先生のインタビュー記事はこちら。

▼金沢美大の学生さんが当社に調査に来社された時の様子はこちら。

今回は、今年9月下旬に石川県小松市にある九谷焼の窯元「宮吉製陶」と、真田紐の工房「織元すみや」に伺い、作品ができる工程や職人さんたちの技術を間近で見学してきた時の様子をレポートします。

金沢駅に到着すると今回の制作でお世話になっている金沢美術工芸大学工芸科の先生たちと学生さんたちが車で迎えにきてくれました。
宮吉製陶と織元すみやは金沢市から車で1時間弱のところにある石川県小松市に工房を構えています。早速車に乗って小松市へと向かいました。

市内を過ぎるとあっという間に田んぼが広がります。
新米の時期にさしかかっていたので、あたり一面がきれいな緑と黄金色に染まっていました。

車内では「くくる」のパッケージデザインの方向性を学生さんたちと話したり、これから伺う工房のお話しを聞いていたらあっという間に宮吉製陶に到着。

「宮吉製陶」九谷焼の歴史を次世代につなぐ熟練の技

350年以上の歴史がある九谷焼。
宮吉製陶は昭和47年に創業して以来、九谷焼の伝統を尊重しながら熟練の職人たちによる技術により、時代に沿ったライフスタイルに合わせ少しずつ形を変えながら常に新しい九谷焼を探求し続けています。

工房に入ると窯で焼く前の器が広い工房の中にずらりと並んでいました。
職人さんたちが磁器を研磨する機械の音などが鳴り響きます。
今回は工房の方に九谷焼が完成するまでの製作過程を工房内をまわりながら説明していただきました。

最初に案内していただいた場所は、磁器の型を作る「成形」を行う場所。
九谷焼の原料は「花坂陶石(はなさかとうせき)」と呼ばれる陶石で、石川県小松市花坂町で採掘されます。

「花坂陶石」は鉄分が多く、焼くと青みがかった色になり、吸水性があり粘り気が強いため、成形や細やかな作業に適しています。ろくろで挽きやすいというのも特徴です。
成形作業は、電動ろくろのほか、大量生産をする場合にはローラーマシンでも成形しているとのこと。

職人1人で半乾燥させて形を作るのに半日かかるところを、機械だと3秒で作ってしまいます。
余った粘土はその部分を切除してバケツにいれて還元させています。

現在「花坂陶石」は、採石できる鉱山が少なく、粘土を再利用するために「花坂陶石」の粘土屋さんに持っていってもう一度綺麗な粘土にして再利用しているそうです。

機械作業といえど、100%機械で制作するのではなく、3割が機械で7割は職人の手作業で作られています。
ほかの産地は最初から最後まで機械でやるところもたくさんあるらしいのですが、宮吉製陶では最後は職人が手作業で作るのが特徴の一つ。

手作業で行うのには理由があります。
乾燥させた時点で同じ形でも色が少し異なるものが出てきます。それは水分量の違いで、色が濃いものは水分量が多いあかし。
例えばマグカップのように二つのものを合体させる場合、水分量がないとつなぎ合わせることが難しいのです。そして合体させる水分量が異なると、乾燥している方に水分も持っていかれてしまい、変形する原因になってしまいます。
変形させないために水分量を同じにするのは職人さんの力の加減によって変わってしまうので細心の注意を払って作業しているそうです。
大変むずかしい作業で、このような熟練の経験と技でしか成し得ないために職人の手作業が必要不可欠なのです。

こちらは皿の型押しをしている現場。
この部屋で作られる磁器は最初から最後まで職人の手で作られています。
例えばこのお皿はかなり薄く、気をつけて持ち上げないと割れてしまうほど繊細で薄く作られています。このような繊細な作品は職人の手でしか作ることができません。
機械でも作ることはできますが、磁器を機械から外す時が一番割れやすいため、それを避けるために職人さんが作っています。お皿の型も職人さんが制作したもの。

ちょうどお皿の型をとっているところを見せていただきました。
まず、ろくろで似たような皿をつくります。そこから「型打ち」といってうつわに形を写していきます。もう少し乾燥させたら削っていきます。

お皿がとても薄いので光にあてると透けて見えて美しい。
そこまで薄く作ることができるのもまさしく職人の技術。腕のいい職人さんにしか作り出せない代物です。それでも型から取る時が割れないかと一番緊張するところだそう。乾燥させたら、職人さんの手で一つずつ形を整えていきます。

職人の手で作る場合は使用する粘土を「花坂陶石」100%で作るため、九谷焼の中でもほかのものとは見た目の色合いも異なります。
「花坂陶石」は粘りが強いので、1度機械に入れたら出てこないリスクがあります。
そのため、機械で制作する場合は「花坂陶石」を卸している粘土屋さんに機械に特化した粘土を作ってもらっているそうです。
今回の良縁守「くくる」は「花坂陶石」が入っているので、正真正銘の九谷焼ということになります。

工房の中にはギャラリーショップがありました。
たとえば焼いたあとに小さな点が見つかると買い取ることができないため、プライスダウンさせて販売したり、宮吉製陶のInstagramをフォローすると赤いシールがついた磁器を1つプレゼントするなどしています。

昔は売れない磁器は処分していました。
九谷焼の原料である花坂陶石は焼き物であり、石を砕いて作っているため、中にガラスの成分が入っています。
そのため、処分しても地球に風化されにくいので、再度粘土に戻して組み立てて再利用することができないそうです。

九谷焼独特の青みがかった白色は「花坂陶石」が作り出しています。
そのため、花坂陶石をどれくらい粘土に配合させているかによって色味が異なってきます。

宮吉製陶では職人26名をかかえています。九谷焼の大量生産向けの窯元は現在3軒しかなく、宮吉製陶は金沢で7割のシェアを占めているというのは驚きました。
一つの作品を作るのにこれだけの手間暇がかかるうえに手作業でしか生み出せない技がある。
良縁守「くくる」が、いかに職人さんの卓越した技術を駆使して制作されたのか、工房を見学させてもらい、肌身で実感することができました。

工程は本格的な焼きの段階に入っていきます。
焼く前に完全乾燥させ、焼くと水につけても形が崩れない形を維持するために素焼きをします。
窯の中は500度まで熱が上がります。磁器の中のガラス成分が溶けて全体をコーティングして崩れない形を維持するためにこの工程は欠かせません。ちなみに800度まで温度をあげると色がより美しさを増します。

焼いたあとはいよいよ釉薬をかけます。
職人さんが一つずつ手作業で釉薬をかけていきます。この作業をしながら磁器をチェックして綺麗な状態へと仕上げます。

いよいよ本焼きへ。
大きな窯の中にたくさんの磁器を一度に焼くため、磁器が置いてある場所によって温度差がでてきてしまいます。これだけ大きな窯にあると温度差が激しい。そのため窯のどこに置くかで職人さんが経験で釉薬を塗る加減を調整していきます。まさしく経験による熟練の技にしか成し得ないこと。
12〜13時間ほど焼いたら九谷焼の絵付け前の工程は終了!
そこから上絵付けが行われ、絵付け部分を窯で焼いて九谷焼は完成します。

宮吉製陶の九谷焼のフチにある茶色のラインは「縁錆(ふちさび)」と呼ばれる伝統的な装飾技法です。またの名を「口紅」といいます。
由来は諸説あるそうですが、17世紀の古九谷より以前の中国の時代にはすでにあった古い技法だそう。
中国の陶磁器の名産地・景徳鎮では粘土と釉薬の吸収率が合わなくて、焼いたらギザギザのの虫食い状態になってしまうのを防ぐために、鉄の釉薬を塗ってみたら上手くいったことからこの技法が生まれたそう。これが焼く前や赤色で焼いたあとは茶色になります。
このフチは絵付けの際にも便利で、境界線があることで内と外の見分けがつきやすく絵付けしやすいという利便性も兼ね備えているというのだからすごい技術ですよね。
一度この釉薬は生産中止になってしまったそうですが、宮吉製陶が半年にわたり調合を行い、元の色を再現することに成功。このフチを見て「この磁器は宮吉製陶のものでは?」と言われるほど「縁錆(ふちさび)」は宮吉製陶の九谷焼を象徴するものになりました。

今回の良縁守「くくる」は、大きさ45×45×13ミリという小さな磁器に、細やかなデザインが施されています。
型を作る段階で、表面の梅のモチーフはどこまで膨らみを表現できるのか、といったことを細かく作り込んでいます。穴を作るために2つの型を合わせて合体させたため、先ほどのほうに同じ水分量になるよう職人さんの熟練の技を最大限に活かしてくださいました。

Photo by Chie Ando

絵付けは金沢美術工芸大学で行なっていただき、絵付けに込めた細やかな意味合いを見事に表現してくださいました。
ぜひ良縁守「くくる」を直接お手に取って、九谷焼の熟練の技をご覧ください!

Information
宮吉製陶(みやよしせいとう)
石川県小松市吉竹町ツ3-62
HP:https://miyayoshiseitou.jp/top/
Instagram:https://www.instagram.com/miyayoshi_kutani/

「織元すみや」伝統の技を現代に

宮吉製陶の次に訪れたのは、真田紐の工房・織元すみや
工房の中に入ると大きな機織りの機械がたくさんの糸を張って製織しており、大きくてリズミカルな音が印象的です。

昭和3年に創業した織元すみやでは、気温や湿度によって常に変化していく糸を見定め、その日その時のコンディションに合わせて紐を織っています。
真田紐は、千利休が活躍してた450年ほど前から茶道具として茶碗を入れる桐箱を結ぶ紐として有名ですが、さまざまな贈呈品などに用いられ、美しく包装しそのものをさらに美しく昇華する贈り物の魅力を最大限に活かす日本人の心が込められています。

真田紐の国内シェアの85%を占めているのが織元すみや。
茶道などの伝統工芸が盛んな石川県では、真田紐を注文する窯元や人間国宝と呼ばれる方々からの需要が多かったこと、製織に適した気候であることなどから、今や真田紐の一大産地へと成長しました。

経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)を平らな紐にする世界で最も幅の狭い織物のひとつともいえる真田紐。
伸びにくく結び直しやすいため、古くから桐箱のように何度も縛ったり解いたりするものや重たいものを吊るしたりするのに大変重宝されていました。

織元すみやは京都の工房で染められた最高級の絹や木綿を使用し、「カセ」という状態から糸繰りをしてそれを棒状のようなものに巻き付けます。
経糸(タテ糸)を整えていきます。正絹の真田紐の場合、幅9ミリで191本、15ミリで303本の糸が必要になり、その組み合わせで紐の柄ができていきます。あまりの糸の多さに驚きました。

「くくる」では経糸として52本を使用。1本1本を糸かけに通していくのはとても繊細な作業で、一定のリズムで均一に巻いていく必要があるためその技術力の高さも求められるのです。
そして柄に合わせて経糸(タテ糸)を開き、そこに緯糸を折り合わせていきます。糸はその日の気温や湿度によってたるんだりしてくるため常に調整しながら織り合わせていきます。

出来上がった糸は織り目の確認や傷がないかなどの最終確認。
「くくる」では袋織といって袋状に紐が織られているため、一巻きが30メートルあります。世界に一つしかないこの真田紐は緑と水色をベースにしたなんとも美しい紐に織り上がりました。

Photo by Chie Ando

真田紐は先端を自分で処理する必要があります。
紐先端の横糸を引っ張ってしっかりと結ぶことで房を作ることができます。
こちらの処理の仕方は、織元すみやのHPに載っているので、紐を調整される際などにはぜひ参考にしてみてください!

織元すみやでは地元の酒蔵とコラボレーションしたり、靴紐として、コースターなどの小物へのアレンジのほか、椅子の座面やアウトドアの際に使用する椅子なども真田紐を用いて注文を受けられているそう。
伝統をつなぎさらに昇華させるため、現在のニーズに合わせた新たな可能性を模索しながら技術の精度にさらに磨きをかけています。

何度も結んでも形が崩れず強く織られた織元すみやで製織された良縁守「くくる」オリジナルの真田紐。
美しくやわらかで穏やかな印象の風合いと真田紐の感触をぜひお手に取ってご覧ください。

Information
織元すみや(おりもとすみや)
石川県小松市小寺町甲77-1
HP:https://www.sanadahimo.com/
Instagram:https://www.instagram.com/orimoto_sumiya/

Photo by Chie Ando

熟練の技術の積み重ねと、伝統工芸を支え繋げていく勇気ある革新的な一歩があったからこそ、今日までこれらの工芸技術が進化を続けながら文化と人を支えていることを今回のお守り制作を通して肌で実感しました。
それはあらゆる伝統を繋げていくことにも通じること。
根幹となる技術や基礎的なことを体内に染み込ませたうえで、「今」を表現する、「今」を生きる。その積み重ねを大事にしたい。

良縁守「くくる」には多くの人たちのつなげてきたバトンと思いが込められています。
来年1月1日より頒布いたします。
ぜひ初詣にお参りにいらした際には、実際にお手にとって思いのバトンを感じてみてください。

<良縁守「くくる」概要>

  • 制作:穏田神社 × 金沢美術工芸大学工芸科学生2名 (陶磁専攻4年生、染織専攻2年生)
  • 頒布開始:令和7年1月1日(水)午前0時
  • 頒布価格:3,800円
  • 頒布場所:穏田神社社務所
  • 制作協力:宮吉製陶(九谷焼)、織元「すみや」(真田紐)

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